骨粗しょう症とは、骨が脆くなる病気です
当クリニックでは、骨粗しょう症の治療に力をいれています
わが国においては、高齢化社会の到来とともに骨粗しょう症の患者さんが増えており、その数は1300万人と推測されています。(たとえば、2017年度の調査では、高血圧は900万人、糖尿病は1000万人と言われています。骨粗しょう症が多いことがわかる統計です。)
骨粗しょう症では骨が脆くなるため、ちょっとしたことで骨折しやすくなりますが、骨がもろくなっても痛いわけではありません。
骨折したときにはじめて痛みを感じ、病院を受診してみると、骨折と共に骨粗しょう症が判明するケースが多くみられます。
背中や腰、手首、足の付け根、肩といった部位に骨折がよく見られます。特に、背骨の骨折は痛みを伴わず、「いつのまにか骨折」と呼ばれる例が、3人に1人もいらっしゃいます。
そのまま放置すれば5人に1人が1年以内に別の部位の背骨が骨折してくることが分かっています。(骨折の連鎖)
骨粗しょう症は特に女性に多い病気で、患者さんの80%以上が女性といわれています。
こんな症状が出たら、要注意です
- 姿勢が悪く、背中が曲がってきた
- 腰や背中が痛い
- 以前より身長が2cm以上縮んできた
女性に多い骨粗しょう症
人間の骨量は、概ね20~30歳ごろにピークとなり、その後は徐々に減っていきます。
骨粗しょう症患者の約8割は女性であり、女性ホルモンの分泌バランスが変化する更年期以降に多く見られます。
閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し、同年代の男性に比べて早く骨密度が低くなります。
60歳代では2人に1人、70歳以上では10人に7人が罹患していると言われています。
その理由は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が低下するためです。
エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが溶けだすのを抑える働きがあります。
そのため、閉経期を迎えて女性ホルモンの分泌が低下すると、骨密度も低下してしまうのです。
一方、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒、運動習慣、ステロイド薬を使用中の方、糖尿病なども骨粗しょう症の原因と考えられています。
このような方は骨粗しょう症の検査を
- 50歳以上の女性で痩せている
- ご家族に大腿骨骨折をした方がいる
- 煙草を吸っている
- ステロイド薬を使用中の方
- お酒を大量に飲まれる方
- 糖尿病の方
- これまでに過度の食事ダイエットをされたことがある方 など
骨密度検査とレントゲン、血液検査で骨粗しょう症がわかります
当クリニックでは、全身用骨密度測定装置により、背骨(腰椎)と大腿骨での骨密度検査が可能です。
ガイドラインでは腰椎・大腿で測定を行うことが推奨されており、この部位の骨密度を評価することで信頼性の高い診断が可能です。
レントゲン検査で、背骨や大腿骨に骨折を確認した場合は、それのみで骨粗しょう症と診断されますが、詳細にみる必要がある場合は、MRIによる検査を行うこともあります。
また、血液検査で骨代謝マーカーを測定することにより骨の新陳代謝の状態や、「骨の質」の評価も可能となっています。これらの検査を組み合わせることにより質の高い診断が可能です。
骨粗しょう症の予防と治療について
生活や運動などの生活習慣を見直すことにより、予防と改善が可能です。
食事療法
骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリング(骨の代謝)に必要なビタミンD・Kなどです。
乳製品(牛乳やチーズなど)や大豆(豆腐、納豆など)、魚類、きのこ(しいたけなど)、海草や緑黄野菜(ホウレンソウやパセリなど)に多く含まれています。
これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。また、喫煙や過度のアルコール摂取を控えることも大切です。
運動療法
骨は、運動をして負荷をかけることで増え、丈夫になります。さらに、筋肉を鍛えることで体をしっかり支えられるようになったり、バランス感覚が良くなったりし、ふらつきが無くなって転倒を防ぐことにもつながるため、運動療法は骨粗しょう症の治療にあたり不可決です。
骨量を増やすには、激しい運動をする必要はありません。
理想はジョギング程度ですが、難しい場合は早歩きやウォーキング程度でも十分です。
可能なら毎日、あるいは週に数回でも十分ですので、とにかく長く続けることが大切です。
薬物療法
骨粗しょう症の診断を受けたら、運動療法に合わせて薬物療法を開始します。
現在、使われている薬には、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などがあります。内服薬や注射などから、検査結果によって適切な治療薬を使用いたします。
現在治療に用いられている薬には、主に以下のようなものがあります。
ビスフォスフォネート製剤
第1選択となることが多い薬です。骨吸収を抑制することによって骨形成を促し、骨密度を増やす作用があります。腸で吸収され、すぐに骨に届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑えます。骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて新しい骨がきちんと作られ、骨密度の高い骨ができ上がります。毎日、週1回、月1回の内服のタイプや静脈注射、点滴など投与の仕方も選べます。
活性型ビタミンD3製剤
食事で摂取したカルシウムの腸管からの吸収を増やす働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。
SERM(サーム:塩酸ラロキシフェン)
骨に対しては、エストロゲンに似た作用があり、骨吸収を抑制する効果があります。骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。閉経後の女性に処方することが多い薬です。
カルシトニン製剤(注射薬)
骨吸収を抑制する注射薬ですが、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに用いられます。
デノスマブ
半年に1回の皮下注射による投与です。RANKLというたんぱく質に作用し、破骨細胞の働きを抑えることで骨吸収を抑制し、骨密度を上昇させます。